北方謙三のハードボイルド

生きながら死ぬな

男の人生に併走するハードボイルド

その主人公の書かれ方は、生まれながらにして熱く衝動的で、生きながら死ぬことを怕がる男である。そして、躍動の中へ自らが突き進み、死に場所を求めているような生き方をする。北方健三は反射神経的な行動を羅列する。理由もなく躰が動いてしまう衝動が物語を展開させる。


ここのところ半年の間、北方謙三のハードボイルドが立て続けに頭の中を占有している。北方謙三を読むと、もう大沢在昌には戻れないかもしれない。それだけ北方謙三はストレートなほどに自己のテーマを小説にぶつけているような本気さが介在する。そのこだわりの中には完成したい男の哲学や美学を散りばめているのだ。印象深いのは「生きながら死ぬな」という観念であり、死に場所を求める男の生きざまであり、単なるエンターテイメントとしてではなく、エッセーの如く語りかけるのだ。

そこには人間の本能的な残虐性が饒舌に描かれる。そして男にとって何が勝ちで何が負けなのか、男が認める男とは…、様々な場面において感じ入るものがある。主人公は、世間からは一脱した一匹狼だ。随所に魅力的な口上が燻し銀のように光るのだから読み手をあっという間に虜にしてしまう。

風群の荒野

風群の荒野「自分が何か。相手が何か。それが瞬時に分かる男なんだ。哲学さ、これは。」




冬の狼

冬の狼「あんたは、なかなか根性の据わった人だと思う。ただ、弱いのは、自分の野心とか理想とか、そんなもん持っちまってるってことだね。そういうものは男を強くするが、同時にひどく弱くすることもあるんだ。」

「誇りは、人間の背骨だ。地に山なみがあって水を集めてくれるように、人間には背骨がある。背骨が折れれば、人間は死ぬ。生きていても、死ぬ。背骨さえしっかりしていれば、死んでも、生き続けているのだ。地の山なみが、崩れてなくなることはない。誇りを持った人間が、忘れられることもない。」

男は滅びのなかに生きる

北方謙三「人間の内面に深く掘り下げてくと、どんどん本質的になっていく。汚さとか、弱さとか、そういうものがむき出しになってくる。」「男の死に様、すなわち如何に生きるか」

北方謙三

昭和22(1947)年、佐賀県唐津市生れ。47年中央大学法学部卒。58年「眠りなき夜」で第1回日本冒険小説協会大賞、第4回吉川英治文学新人賞、平 成3年「破軍の星」で第4回柴田錬三郎賞、16年「楊家将」で第38回吉川英治文学賞、18年「水滸伝」で第9回司馬遼太郎賞、19年「独り群せず」で第 1回舟橋聖一文学賞、22年第13回日本ミステリー文学大賞を受賞。

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