Endorphin

脳内の神経伝達物質

視覚・味覚・聴覚・触覚・嗅覚、いわゆる「五感」を使って脳に刺激を与えると、エンドルフィンは多く放出される。

エンドルフィン(ENDORPHIN)は、脳内で機能する神経伝達物質のひとつで、「体内で分泌されるモルヒネ」である。食欲、睡眠欲、生存欲、性欲、集団欲などの欲求が満たされると最も分泌されるのがエンドルフィンである。但し、物理的欲求は目的が満たされれば、今度はそれを失う不安に代わる(ノルアドレナリンが抑制として機能するから)。

ドパミン

違法ドラッグであるコカインや覚醒剤(メスカリンなど)は、脳内にドパミンという物質の過剰な放出をおこし、覚醒作用や快の気分を生じさせるものであるが、逆に不安や抑鬱をもたらす(バッドトリップ)をも引き起こしてしまう。ステーブ・ジョブズは過去に様々な薬物常習者であり、コカインはもちろん、大麻やLSDに至っては毎日やっていたと自身の伝記で明かしている。

自分自身が全てを受け入れて完結できるような欲望は、ただ愛するという欲求だ。だれかを愛するというのではなく、「愛する」という「受け入れる心」をただ純粋に高めていくような精神的な欲求は、エンドルフィンの放出をいつまでも持続させるといわれている。これは、純粋欲といわれている。

単純で、重量化しない精神構造は、ミニマリズムと自分の価値観やライフ・スタイルに信念を持つことであると思っている。

一般的に人間に本能行動はほとんど無いかわずかであると見なされている。また社会学、哲学、心理学の一部では本能を「ある種の全ての個体に見られる複雑な行動パターンで、生まれつき持っており、変更がきかない」と定義する。この定義の元では性欲や餓えも変更がきくために、本能とは言えないと主張される。極端な行動主義や環境決定論においてはあらゆる種類の「本能」が否定され、行動はすべて学習の結果として説明される。─wikipediaより引用

From "The Funny Side of Physic" by A. D. Crabtre

北方謙三の世界

男の人生に併走する「生きながら死ぬな」

その主人公の書かれ方は、生まれながらにして熱く衝動的で、生きながら死ぬことを怕がる男である。そして、躍動の中へ自らが突き進み、死に場所を求めているような生き方をする。北方健三は反射神経的な行動を羅列する。理由もなく躰が動いてしまう衝動が物語を展開させる。

ここのところ半年の間、北方謙三のハードボイルドが立て続けに頭の中を占有している。北方謙三を読むと、もう大沢在昌には戻れないかもしれない。それだけ北方謙三はストレートなほどに自己のテーマを小説にぶつけているような本気さが介在する。そのこだわりの中には完成したい男の哲学や美学を散りばめているのだ。印象深いのは「生きながら死ぬな」という観念であり、死に場所を求める男の生きざまであり、単なるエンターテイメントとしてではなく、エッセーの如く語りかけるのだ。

そこには人間の本能的な残虐性が饒舌に描かれる。そして男にとって何が勝ちで何が負けなのか、男が認める男とは…、様々な場面において感じ入るものがある。主人公は、世間からは一脱した一匹狼だ。随所に魅力的な口上が燻し銀のように光るのだから読み手をあっという間に虜にしてしまう。

「自分が何か。相手が何か。それが瞬時に分かる男なんだ。哲学さ、これは。」

「あんたは、なかなか根性の据わった人だと思う。ただ、弱いのは、自分の野心とか理想とか、そんなもん持っちまってるってことだね。そういうものは男を強くするが、同時にひどく弱くすることもあるんだ。」

川北義則の哲学

女には分からない男の美学

川北義則が日本の男たちに届けたい言葉がここにある。腹を割って男同士で語る本音が炸裂する。女性の方には反感を買うかもしれない。ジェンダー世代の男たちにとっては非常に評価が割れている本であるらしい。

だが、大いに結構ではないか。あっちにもこっちにも気ばかり遣って何が言いたいのか分からないような本が多い中、ずばり対象は男たちだけに向けて放った言葉なのだから。だから女性の方には沈黙しておいてもらいたい。あの三島が言っている『女の批評って二つきりしかないじゃないか。”まぁすてき”、”あなたってばかね” このふたつきりだ。』 と。男には女が、女には男が理解しがたいこともあるぐらいで置いておこう。

さて、「今、日本の男たちに足りないもの、それは『遊び心』ではないだろうか」。何が楽しくて生きているのか分からない男が増えて困っている。『遊び心』が無いことは、探究心が無いのと等しい。だから、仕事にも響く。発展して、もうけた人をうらやみ、即物的な欲望にとらわれるようになる。川北義則はそんな品格、品性を欠いた男になるな、と語りかける。

From "The Funny Side of Physic" by A. D. Crabtre

村上春樹の翻訳

Raymond,レイモンド・Chandlerチャンドラー

レイモンド・チャンドラーの小説は高校生のときに読んで心酔してしまった記憶がある。あれから暫らく経って、こよなくチャンドラーを愛好している村上春樹が翻訳して2007年3月に大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作を「完訳版」として鮮やかに蘇らせたのだった。村上春樹も何度も繰り返し読んだらしいが、どうして読み飽きることがなかったのだろう。

男にとってハードボイルドは宝物のようだ

007はいつまでもショーン・コネリーだった。同じように、フィリップ・マーロウ(Philip Marlowe)は、レイモンド・チャンドラーが生み出したハードボイルド小説の探偵だが、ずっと我輩の心に棲み続けた。それは男として生きていくモラルのような存在だったと記憶している。

書かれる内容はシニカルなものも多く、社会に、女に、カネに、男に、意気地に、あらゆるものに対しての世界観が尖ったナイフような切れ味で心地よかった。

ハードボイルドが読まれた時代があった。今よりもっと野蛮で軟弱な生き方を拒否した時代だった。ギムレットやマティーニ、バーボンが飲まれた。ハードボイルドは男のドパミンを分泌させる中毒性の作用があり、中毒者はボギー(ハンフリー・ボガート)を気取った。危機に陥った時、それをものともしないような軽口を叩くことができるだろうか。日常の中で怒りと失望を以って毒づくことを忘れていなければまだ間に合うかもしれない。

シニカルな台詞が気に入ったので書いておこう

「我々はデモクラシーと呼ばれる成体の中に生きている。国民の多数意見によって社会は運営されている。そのとおりに動けば理想的なシステムだ。ただし投票するのは国民だが、候補者を選ぶのは政党組織であり、政党組織が力を発揮するためには、多額の金を使わなくてはならない。誰かが彼らに軍資金を与える必要がある。そしてその誰かは──個人かもしれないし、金融グループかもしれないし、労働組合かもしれないし、なんだっていいのだが──見返りに気遣いを求める。」

「新聞がやっているのは、人がやっと手にしているプライバシーに絶え間なく脅威を与えることだ。連中は何かといえば報道の自由を標榜するが、その自由とはごく少数の高尚な例外をべつにすれば、醜聞や犯罪やセックスや、薄っぺらな扇情記事や憎悪やあてこすりや、あるいは政治や経済がらみのプロパガンダを世間にばらまくための自由に過ぎない。新聞というのは、広告収入を得るためのただの入れ物商売なのだ。広告収入は部数によって決定されるし、部数が何によって決まるかは知っての通りだ。」

「金というのは奇妙なものだ。まとまった額になると、金は一人歩きを始める。自らの良心さえ持つようになる。金の力を制御するのは大変に難しくなる。人は昔からいつも金で動かされる動物だった。人口の増加や、巨額の戦費や、日増しに重く厳しくなっていく徴税──そういうもののおかげで人はますます金で左右されるようになっていった。世間の平均的な人間は疲弊し、怯えている。そして、疲弊し怯えた人間には、理想を抱く余裕などない。家族のために食糧を手に入れることで手一杯だ。この時代になって、社会のモラルも個人のモラルも恐ろしいばかりに地に落ちてしまった。内容のない生活を送る人間たちに、内容を求めるのは無理な相談だ。」──THE LONG GOODBYE / RAYMOND CHANDLER(訳:村上春樹)より引用

From "The Funny Side of Physic" by A. D. Crabtre

大沢在昌の漢

これぞエンターテイメント

大沢在昌のハードボイルドを読んだ。大沢在昌の心は漢(おとこ)にあるようだ。だから読んでいるうちにウズウズしてきて力が漲ってくる感覚がある。

手当たり次第という感じで、大沢在昌の本を読んだ。何といっても、物語のクライマックスに差し掛かるところからのドライブ感に圧倒される。映画でいうならば、ベースとドラムが高なる心臓のビートを刻み続け、ときに閃光が放たれフィードバックされた図太い音が炸裂する感覚だ。この間は前へ前へと気持ちははやるばかりで、もはや本をおくことはできない自分がいる。映画的エンターテイメント小説である。

大沢在昌が描く物語の中で真骨頂なのが新宿を舞台に繰り広げられるハードボイルドだ。登場人物は刑事、ヤクザ、不法外国人、中国人マフィア、風俗嬢などが常時キャストとして顔を揃える。

大沢在昌が描く主人公はタフで自己の存在意義に忠実で、どこか社会から一脱した状態ながら突き抜ける衝動によって、どんどん自分を苦境に追い詰めていき満身創痍で突っ込んでいく。「らんぼう」などは例外的に短編でシンプルで痛快無比である。電車などで時間を潰すにはもってこいだ、多少バイオレンス性は伝染してしまうかもしれないが。大沢在昌が書いたもので、現時点では「砂の狩人」が一番秀作であり一番熱くした。

Back

Next

Table of Contents